引継ぎがスムーズにいくオーナー像を知っておく

医療機関の先生とウマが合うか。地域特性を理解しているか……

それでは、ハッピーM&Aを成功させる具体的なノウハウに移りましょう。

「自分の経営理念を分かち合える買い手」を探し出すことの重要性は、この章の冒頭でお話ししましたが、良い買い手の条件は、他にもあります。私の経験からいうと、次のような特性を持った薬局オーナーは、引き継いだ後も、安定経営を続けています。買い手を探すときの参考にしてみてください。

1. 一人ひとりの従業員を大切にしている

従業員を使い捨てするかのようなオーナーでは、薬局の未来が心配です。一人ひとりの従業員を“血の通った人間”として大切にする一方で、甘やかしすぎず、自分で考えられる人材を育てる意欲を持っている。また、従業員と一緒に成長していく姿勢がある。そんなオーナーなら、あなたの薬局をより発展させてくれるはずです。

2. コミュニケーション力が高い

新オーナーの重要な役割は、旧オーナーが築いてきた医療機関や問屋、従業員などとの良好な関係を引き継ぐこと。相手の立場と主張を理解した上で、冷静な発言ができる力が不足していると、その関係は壊れかねません。

特に重要なのは、密接なつながりを持った門前の医療機関のドクターとの関係維持。ご存じのように、個人開業のドクターが、新しいオーナーを嫌がり、院内に処方せんを戻すことも、珍しくありません。その原因は、「性格的に合わない」といった相性の問題もあります。ドクターと新オーナーのウマが合いそうかどうか、十分見極めましょう。

3. 地域特性を理解している

患者さんの特性は、地域ごとに異なるものです。たとえば、丁寧な説明を好む人が多い地域もあれば、ドライなやりとりを好む人が多い地域もあります。

また、門前のつながりのある医療機関の診療科目によっても、患者さんの特性は違います。たとえば、心療内科の患者さんは、「話し好き」の薬剤師を嫌う傾向がありますし、小児科に子供を通院させている母親は、曖昧な物言いをする薬剤師は嫌う傾向があります。

それを理解せずに、「ここの薬剤師は、こんなに口数が少ないのか?

もっと話すべきだ」とやり方を強要しては、患者さんも従業員も離れていってしまいます。こうしたことを理解し、経営方針を柔軟に変えていく能力も、オーナーには必要です。

この点では、これまで近隣のエリアで営業をしてきたオーナー、同じ科の医療機関の患者と接してきたオーナーの方が、順応性は高いようですが、一概には言い切れません。言動の節々から、それらを判断する必要があるでしょう。

譲渡後の薬局を安心して任せられる新オーナーの条件

  • ・同じ経営理念を分かち合える
  • ・一人ひとりの従業員を大切にしている
  • ・コミュニケーション力が高い
  • ・地域特性を理解している

アテック株式会社 取締役社長 鈴木 孝雄
「薬局オーナーのためのハッピー・M&A読本」より

< 前のページへ

次のページへ >