一筋縄ではいかない案件も。地道にノウハウを蓄積

1件も目のM&Aを成功させた後も、問い合わせはたまに来る程度。しかし、実際に動き出す案件は徐々に増えていきました。時には、一筋縄ではいかないような案件に取り組むこともありました。

たとえば、複数の株主がいて、経営者の薬局譲渡に反対し、もめにもめているケースは、少なくありませんでした。複数の薬剤師が共同で立ち上げた薬局や、古参の店長にも株を分けた薬局……。関係者全員の了承を得るために、複数の株主の元に奔走したことは、一度や二度ではありません。

また、時には、医療機関のドクターから依頼を受けることも。あるドクターからは、「目の前の薬局が経営不振だから、なんとかしてほしい」という依頼を受けました。詳しい事情を聞いてみると、実は、そのドクターが大家さんに、その薬局を紹介していたとのこと。家賃を滞納されて困っていたのです。弊社では、経営不振にあえぐ薬局の賃貸契約解除を仲介し、空いた物件で新たに経営する薬局オーナーを紹介。また、旧オーナーとの話し合いのなかで、借金で苦しんでいることを聞き弁護士の斡旋もおこないました。

関東近県で店を営んでいたある個人経営薬局も、思い出深い案件です。2~3年越しでじっくり譲渡先を探し、ようやく買い手が見つかった矢先、一本の電話が入りました。なんとそのオーナーが警察に逮捕されてしまったのです。理由は、オーナーは薬剤師の免許を持っていないにもかかわらず、自分で調剤をしていたこと。人件費を減らすために、夜間に薬剤師を雇わず、こっそり薬を出していたというわけです。最終的に、譲渡契約は締結されたのですが、警察にレセコンが押収されてしまったために、新しいレセコンを調達してもらうよう、なんとか買い手に依頼。冷や汗をかいた記憶があります。

次々と降りかかる難題に頭を抱えたこともありましたが、一つずつ解決していくことで、ノウハウは着実に蓄積していきました。

そうこうするうちに、調剤薬局の世界でも、M&Aの認知度が高まり始めました。2000年代に入ると、医薬分業率の伸びが止まり、薬局が飽和状態に。また、リタイアを考えるオーナーが増えたこともあり、相談件数は右肩上がりで上昇していきました。

そして、2011年現在、弊社が取り扱ったM&A案件は、累計で700件以上に達しています。

アテック株式会社 取締役社長 鈴木 孝雄
「薬局オーナーのためのハッピー・M&A読本」より

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