調剤薬局を譲渡する際の手続き・注意点まとめ

調剤薬局を経営している方の中には、後継者がいなかったり、事業を続けることが困難であったりと、やむを得ず事業を手放さなければならないケースがあります。廃業の選択以外に株式や事業を譲渡する方法を選択される方が増えてきました。

もし調剤薬局を他の人に譲渡することが決めた場合、手続きはどう行えば良いのでしょうか?譲渡する際の注意点と一緒に手続きについてまとめてご紹介しましょう。

調剤薬局を株式・事業譲渡する方法

調剤薬局の株式もしくは事業を譲渡する方法として、薬局M&Aが選ばれています。M&Aは企業の合併や買収のことを指し、薬局を求める企業や個人に株式、もしくは事業を売ることが可能です。株式と事業では譲渡する範囲などが異なるので、それぞれの手法の意味を正しく知ることが大事です。

【株式譲渡】

第三者に株式を譲渡することで、経営権を渡すことができる手法です。調剤薬局および会社の全てを譲渡したい際に選ばれます。包括的に移動するため、株主変更を行う代表者や開設者の変更等で移転・承継を済ませられ、複雑な手続きを必要としません。

営業権は税務上の償却は不可能であり、消費税は非課税となります。課税対象となるのは株主に対する株式譲渡益課税20%のみで、退職金などに活用すればさらに負担は軽減されるでしょう。税務面では売り手にメリットが高いと言えます。

【事業譲渡】

企業の中には事業の一環として調剤薬局を運営していることがあります。その事業の一部、もしくは全てを他社に移す手法です。有形固定資産税以外に、従業員や債権債務、経営ノウハウなどを部分的に承継できます。

対価は株式譲渡とは異なり法人となります。事業に関する資産は個別に移動、取引契約や従業員などは再契約や再雇用と買い手が行う手続きは少し複雑です。その分、買い手にとっては偶発負債のリスクが低く、また税務上償却が可能なので節税効果のメリットがあります。

一方、売り手は取締役会だけではなく、株主総会にて特別決議での承認が必要です。また、譲渡益に税が課せられるので税務面でのデメリットに理解が求められます。一部の事業だけを譲渡できる点や、従業員と資産の一部を残せる点は大きなメリットです。

調剤薬局を閉店させる際の流れ

調剤薬局を閉店する際には、不動産や設備の撤去、従業員や患者へ告知、廃業届、各種契約解除など様々なプロセスを踏んでいきます。株式・事業譲渡で慌てないためにも、閉店までの流れを確認しておきましょう。

【不動産の立ち退き】

普通貸家であれば、立ち退きする3ヶ月前から解約の申し出が可能です。閉店後に解体工事によってスケルトンにしていきます。解体工事はおおむね1ヶ月はかかるでしょう。

【医薬品の処分】

閉店の3〜1ヶ月前の間に売れ残り・長期在庫化している薬をリスト化し、使用する患者が少ない薬をピックアップしてください。それらの薬は返品、もしくは他店に回して在庫を圧縮させましょう。

閉店1ヶ月前は在庫を絞り、小分けなどを活用して医薬品の在庫をなくしていきます。閉店後、余ってしまった薬は捨てずに売却してください。

【設備・備品の撤去】

閉店3〜2ヶ月前までにレセコンや梱包機など、高額な設備のリース契約を確認し、どう対応するか検討してください。そして、1ヶ月前までに余っている消耗品は他店に回し、またリスト化して管理を検討します。

売れるものは閉店までに完売できるように準備し、消耗品は極力残さないようにしましょう。閉店後は解体工事が始まるまでに設備や備品を撤去し、テナントが片付いた状態にしてください。

【従業員・患者への対応】

従業員は解雇となる可能性があるので、閉店3〜2ヶ月前までに社労士に相談し、従業員の再就職先を検討しましょう。告知や面談は2〜1ヶ月前に行い、説明不足などでトラブルが起きないように誠実な対応を行ってください。場合によっては再就職先の斡旋も行います。

また、解雇する際は最低でも30日以上前に予告、または30日分以上の解雇予告手当の支払いが必要です。例えば、4月1日に解雇する場合は、3月2日までに通告しなければなりません。

本来通告しなければならない日を経過した場合は、通告した日から解雇日までの総日数の解雇予告手当を支払いましょう。これは3ヶ月間に支払われた賃金総額から、超過した総日数を割ることで算出できます。可能であれば、解雇の申し渡しと同時に支払うことが望ましいです。

調剤薬局を利用する患者に対しては、告知が早いと客足が遠のく可能性があります。長期処方の方で次回の来局が閉店後になる場合は、DMを用意しておきましょう。在宅患者や施設がある場合は引き継ぎを早めに行ってください。

患者への告知は1ヶ月前から閉店までが良いでしょう。来局される方から順次丁寧に告知してください。次はどこを利用すればいいのかなど、患者の相談に対しては真摯に対応しましょう。

【近隣医療機関への対応】

近隣医療機関への対応はケースバイケースによります。親しい間の医師には早めに伝え、誠意にある対応をとってください。また、閉店まで客足が遠のいてしまわないように、十分理解してもらえるように伝えることも大事です。

閉店1ヶ月前から親しい医師に限らず、親しくなかった医師にも挨拶回りをします。また、近隣の薬局があれば、患者さんの受け入れをスムーズに行ってもらえるように挨拶回りを検討してください。

【各種契約の解約手続き】

各種契約の状態や内容を閉店3〜2ヶ月前までにリスト化して確認し、解約手続きの準備を始めていきましょう。1ヶ月前から閉店までに電気、ガス、水道、インターネットなど、必要な契約以外は解約に入ります。そして、閉店後に直後まで契約していたものを解約しましょう。

【廃業届などの手続き】

廃業届や許認可などの手続きはそれぞれ提出期限が決められており、提出先や必要書類も異なります。数が多いのでチェックシートを用意して、必要書類や提出先、期限を管理しておきましょう。閉店後、最短10日以内に提出しなければならない届出もあるので、閉店3ヶ月前から余裕を持って準備を進めてください。

また、提出の際に書類が足りないと言われてしまうケースも少なくありません。提出先の期間に必要書類や期限の確認、注意事項などを確認しておくと、トラブルを軽減できるのでおすすめです。

譲渡にはどんな手続きが行われる?

実際に調剤薬局を譲渡する時には、どのような手続きが必要なのでしょうか?ここでは、譲渡の際の手続きや注意点をご紹介していきましょう。

まず、調剤薬局の譲渡には事業譲渡と株式譲渡の2つの方法があります。事業譲渡は、調剤薬局の店舗の運営会社を切り替え売却することで、株式譲渡は運営会社をそのままに経営者のみが交代するものです。

調剤薬局を事業譲渡する場合、行政手続きを必ず行わなければなりません。事業を譲渡するとなると、株式譲渡とは異なり運営会社や開設者が変わるので、保健所や厚生局への手続きが必要になります。

株式譲渡の場合は経営者が交代する場合に経営者変更の手続きを行い、運営会社は変わらないので開設者変更の必要がありません。開設者が変更になるかどうかで、行政機関への提出書類や契約書が新たに必要になる可能性があるのです。手続きだけで言えば、株式譲渡の方が楽に譲渡できるでしょう。

ただ、株式譲渡は債務もそのまま引き継ぐ流れになってしまうため、後継者が見つかりにくいというデメリットもあります。調剤薬局の譲渡を考えていても、株式譲渡にするのか事業譲渡にするのかをよく検討しておかなければなりません。

では、事業譲渡を選択したら具体的にどのような手続きが必要なのでしょうか?仮に4月1日付けで調剤薬局を事業譲渡する場合、早くて3月上旬、遅くても3月中旬までに本申請を行う流れとなります。そのため、譲渡契約書は2月下旬までには締結しなければなりません。

この他にも行政による手続きは30件以上あるため、指定された書類を提出する流れが多いので、単純作業を繰り返せばスムーズにできます。行政による許可や指定関連手続きについてピックアップして見ていきましょう。

・薬局開設許可

薬局開設許可書は、調剤薬局を開設する際に必ず提出する必要がある申請書です。薬局の平面図・登記簿謄本または登記事項証明書を添付して提出します。放射性医薬品の取り扱いがある場合は、別途放射性医薬品の種類と取り扱いに必要な設備の概要が記載された書類が必要です。

・薬物製剤製造業許可・製剤製造品目変更許可・製剤製造販売承認者

薬局製造販売医薬品は、薬局開設者がその薬局における設備や器具を用いて製造し、直接患者に販売する医薬品を言います。そのため、承認を要する品目の指定や製造販売の承認が必要となります。特に薬局の製剤が他の医薬品と比べても保健衛生上危害発生の可能性が低いという署名が必要なのです。

・店舗販売業許可

調剤薬局は、店舗を構えて医薬品を販売する販売業です。そのため、事業譲渡して新たに薬局の店舗販売業をする場合、審査基準に満たした施設でなければなりません。

・保険薬局指定申請

健康保険法をはじめ、医療保険などの規定によって療養の給付を行う薬局としての指定を受けることです。厚生労働大臣からの指定を受ければ、医療機関に基づいた処方箋の受付を行い保険調剤が可能となります。

・生活保護法医療機関指定申請

生活保護受給者に対して調剤する場合、生活保護法による指定を受けなければなりません。

・労災保険指定薬局申請

労災保険を取り扱う際には、この申請が必ず必要です。労災保険は業務上の事由または通勤による労働者の負傷や疾病などに対して起用されます。

・自立支援医療機関指定申請

自立支援医療機関指定申請は「育成・厚生」と「精神通院」の2種類があります。障害者の日常生活・社会生活を支援するための法律に伴う手続きです。

・保険薬局機関届

保険薬局が申請事項に変更が生じた場合、行政に届出を行うものです。社会保険や国民健康保険それぞれの届出が必要です。

上記で紹介した手続きは一部です。この他にも、薬剤師会入会届や固定電話・インターネット・電気・ガス・水道などの契約変更なども行わなければなりません。事業譲渡は必要な書類や提出物などの項目が非常に多いので、見落としがないよう注意しましょう。

ただ、実際に調剤薬局の事業譲渡をするとなると、これらの手続きをスムーズにできるか不安になる方もいるのではないでしょうか?そんな時は、調剤薬局の譲渡におけるサポートを行っている薬局M&Aの仲介会社を利用すると良いでしょう。薬局M&Aの仲介会社では、事業譲渡における手続きのフォローも行っているだけでなく、譲渡したい薬局経営者に適している後継者をマッチングしてくれます。

厚生局においては、「遡及申請」を利用して調剤薬局の事業譲渡を円滑に行えるシステムを設けています。薬局M&Aの仲介会社は基本的にこの遡及申請を利用しており、譲渡予定日から逆算してスケジュールを組んでくれるのも大きな特徴です。全体のスケジュールを把握した上で進めていけるので、スムーズな引き継ぎができるのも魅力と言えるでしょう。

薬局M&Aで譲渡をお考えの方はアテックを活用しよう

調剤薬局を事業譲渡したいけど、膨大な手続きを滞りなくできるか不安に感じている方は、薬局M&Aの譲渡を検討してみてはいかがでしょうか?薬局M&Aの仲介会社であるアテックでは、創業当初から調剤薬局M&Aの専門会社として承継のサポートをしています。大手チェーンや中堅チェーン、小さな個人薬局まで幅広い実績があり、薬剤師が実際に応援に入りながら承継を行う場合もあります。

譲渡したい経営者の理想を実現するのを大前提とし、要望に沿った事業承継が可能です。アテックでは株式譲渡・事業譲渡・薬局経営代行などの3つのM&Aを扱っています。

事業譲渡は株式譲渡に比べて手続きが面倒な点を踏まえ、新しいM&Aの形である薬局経営代行も行っています。薬局経営代行は医薬品在庫のみを譲渡し、営業権や内装設備などはそのまま経営者が所有する在り方です。

それぞれメリット・デメリットがあるので、経営者がどのような形で調剤薬局を譲渡したいのかという要望を最も大切にして提案してくれます。また、アテックでは経営者の考えに合う後継者をマッチングできるサイト「ファーママーケット」も運営しています。

ファーママーケットは譲渡したい側と、譲受したい後継者候補をマッチングするためのサイトになっているので、どんな案件があるのか参考にするのも良いでしょう。満足の良く譲渡をするためには、アテックのような薬局M&Aの仲介会社を利用するのが望ましいのではないでしょうか?