オンライン服薬指導は、「0410対応」を経て2022年4月から制度化されました。診療報酬の改定による服薬管理指導料の1つでもあり、高い評価を得ています。今後は、顧客側の認知度が高まったり、調剤薬局側の体制が整ったりすることによって、さらに広がっていくと考えられています。

しかし、オンライン服薬指導の認知度はそれほど高くありません。そこで今回は、2022年4月からスタートした「あたらしいオンライン服薬指導」とはどのような制度か、算定要件はどうなっているのか、調剤薬局経営への影響などを解説していきます。さらに、導入することで調剤薬局が感じるメリットやデメリットについてもご紹介するので、今後のために参考にしてみてください。

■2022年4月からスタートした「あたらしいオンライン服薬指導」とは?

オンライン服薬指導は、これまでに何度か改正されています。まずは、これまでのオンライン服薬指導と2022年4月からスタートした「あたらしいオンライン服薬指導」の違いからご紹介します。

・従来のオンライン服薬指導



従来のオンライン服薬指導は、初回のみ対面でオンラインによる指導は不可となっていました。継続して処方される場合は、オンラインと対面を組み合わせた指導を実施するという方法になっていました。

通信方法は、映像と音声による対応です。音声だけの通信は不可となっていたので、ビデオ通話を使った指導が行われていたということになります。

処方箋は、オンライン診療もしくは訪問診療を行った時に交付されたものです。薬剤の種類は、これまでに処方されていた薬剤またはそれに準ずる薬剤となっていて、後発品への切り替えも含まれています。

調剤の扱いは、処方箋原本に基づく調剤です。

・0410対応と「あたらしいオンライン服薬指導」



0410対応は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の防止などを目的としてスタートしました。薬剤師が顧客や服薬状況などに関する情報を得た上で、電話や情報通信機器を用いた服薬指導を可能にするという措置です。

0410対応と「あたらしいオンライン服薬指導」は、基本的に同じです。いずれも、初回から薬剤師の判断でオンライン服薬指導が可能となります。また、どの診療の処方箋であっても対応可能です。

薬剤の種類は、原則としてすべての薬剤となっています。ただし、手技が必要な場合は薬剤師が適切だと判断した場合に限るので、できない可能性もあると覚えておきましょう。薬剤の取り扱いに関しては、医療機関からFAXなどで送られてきた処方箋情報で調剤可能です。

このように、基本的には同じようなオンライン服薬指導となっています。しかし、通信方法が異なります。0410対応は電話(音声のみ)でも問題ありませんでしたが、「あたらしいオンライン服薬指導」は映像と音声による対応で音声のみは対応不可です。

2022年4月からスタートした「あたらしいオンライン服薬指導」のベースとなる部分は0410対応と同じであり、通信方法だけは従来と同じになっているので注意しましょう。

■オンライン服薬指導の算定要件について

オンライン服薬指導の算定要件も確認しておきましょう。外来も在宅も点数がアップしています。

・外来の場合



外来の場合の点数は、3ヶ月以内に処方箋受け付けをした人は45点、それ以外の人は59点となっています。服薬管理指導料として算定可能です。情報通信機器を使用した時は処方箋の受付1回につき45点、おくすり手帳を提示せずに3ヶ月以内に処方箋受け付けをした人は59点を算定できます。

これまでは、薬剤服用管理指導料として算定可能となっていました。加算は一律で43点、算定は毎月1回までです。麻薬等加算や乳幼児服薬指導加算などは算定できないものもあり、施設基準も明確に決められていました。

・在宅の場合



在宅の場合の点数は、在宅患者オンライン服薬指導料として一律59点となっています。在宅で療養している人に対してオンライン服薬指導を行った場合に算定できます。1人につき毎月4回までとなっていますが、末期の悪性腫瘍や中心静脈栄養法の対象者は月8回(週2回)まで算定可能です。

保険薬剤師1人あたり週40回までという制限が設けられています。また、訪問薬剤管理指導を同じ日に行った時は、在宅患者オンライン服薬指導料の算定はできません。

従来は、点数が一律、算定は週10回まで、算定できないものもあるといった状況でした。施設基準も厳密で、届け出が必要となっていました。

このように、いずれの場合も点数がアップしています。また、施設基準もなしとなっているため、よりオンライン服薬指導を導入しやすい状況になったと言えるでしょう。

■オンライン服薬指導は調剤薬局経営にどのような影響を与える?

オンライン服薬指導が一般的になると、調剤薬局経営にも大きな影響を与えることになります。具体的にどのような影響が考えられるのでしょうか?

厚生労働省では、薬剤師の働き方改革を推進させようと考えています。そのためのプランの1つに、オンライン服薬指導に関するものが盛り込まれています。それが、自宅などからリモートワークで服薬指導を行うという内容です。

近年、リモートワークは多くの業種で導入されています。対面でなければできない仕事ももちろんありますが、そうでない仕事もたくさんあります。薬剤師も、服薬指導であればオンラインでできるのではないかという理由で、このような取り組みを厚生労働省では推進しているのです。

働き方は多様化していて、薬剤師にもその波が押し寄せています。自宅からオンラインで服薬指導ができれば、出勤とリモートワークを交互に行うこともできるでしょう。そうすることで、よりプライベートも充実しやすくなり、薬剤師はさらにやりがいのある仕事になっていくと考えられます。

そうなれば、薬剤師を目指したいと考える人も増えていくでしょう。そして後継者不足解消につながっていけば、調剤薬局業界の未来も明るいと言えます。そのような未来を手に入れるには、やはり時代のニーズに合わせたサービスを提供することが重要です。

■導入によるメリット・デメリットとは?

オンライン服薬指導を行うと、様々なメリットが生まれます。しかしメリットだけではなくデメリットもあるので、双方を理解しておく必要があります。では、どのようなメリット・デメリットがあるのかみていきましょう。

【メリット】



・業務の効率化や負担軽減につながる

オンライン服薬指導により、薬剤師が抱えている業務の効率化や負担軽減を目指せます。訪問を必要とする人に対してオンライン服薬指導を併用すれば、薬剤師が訪問しなければいけない回数を減らせます。負担軽減になれば、仕事に対するモチベーション維持にもつながりやすくなるでしょう。

また、離島やへき地などの医療資源が不足するエリアへの対応もしやすくなります。通信機器を使うというのは高齢者にとってハードルが高いかもしれませんが、上手く活用できれば医療資源の円滑な供給を実現しやすくなると考えられます。

・薬局内感染を防げる

オンライン服薬指導を導入すると、薬局内に人が集まらなくなります。そうすると、薬局内での感染を防ぐことにつながるのです。高齢者や免疫が低下する疾患を持つ人は、ちょっとした風邪が命取りになってしまう場合もないとは言い切れないため、薬局内感染を防げるのは大きな安心要素になるでしょう。

自宅にいながらオンラインで服薬指導を受けられれば、体調が悪い時も安心です。すぐに横になったり、トイレに駆け込んだりといったことが自宅であれば気兼ねなくできます。

・通院の負担を軽減できる

バスや電車のアクセスが良くないエリアだと、通院すること自体が負担だと感じてしまうケースも珍しくありません。高齢化によって家族が付き添わなければいけなくなった場合であれば、仕事を1日休まないといけない事態になってしまいます。家族にとっても通院は大きな負担になるので、オンライン服薬指導に対応できるようになるとかかりつけ薬局にしたいと考える人も増えると予想できます。

また、オンライン服薬指導を導入すると医療資源が乏しいエリアでも専門性の高い指導を提供できるようになるのです。より多くの人に利用してもらうきっかけになるという点もメリットとして挙げられます。

・医療費の抑制効果が期待できる

オンライン服薬指導が普及すると、医療機関への受診や薬物を使った治療がより身近になります。医療機関への受診率や薬物治療の継続率が高くなると、慢性疾患の重症を防ぐ安くなるのです。

また、薬剤師からアドバイスを受ける機会が多くなれば、服薬アドヒアランスが良くなって残業問題も解消へと導けます。その結果、医療費を抑制する効果が期待できると言われています。服薬アドヒアランスは医師の指示に従って積極的に薬物療法を行うことを指し、治療の効果を正しく判断したり、副作用を抑えたりすることにつながるのでメリットが大きいです。

【デメリット】



・オンラインだと限りがある

対面とオンラインでは、やはり対面の方が情報を伝えやすいです。薬剤師が受け取れる情報も少なくなってしまうので、細かい変化に気が付きにくくなります。また、検査の結果やおくすり手帳の情報を受け取れないこともデメリットとして挙げられるでしょう。

また、自己注射や吸入器などの複雑な手順が必要な医薬品との相性も良くありません。手技を画面越しに伝えた場合、的確に伝わらない場合も考えられます。そうなってしまうとトラブルも元なので、対面の方が良いと感じてしまう場面も往々にしてあると予想できます。

・配送をしなければいけない

オンライン服薬指導をした場合、医薬品の配送をする必要が出てきます。対面であれば手渡しでしたが、リモートで指導しているので同じようにできません。受診してから薬が手元に届くまでタイムラグが生じたり、配送料を負担したりするのは大きなデメリットです。

さらに、配送手段を確保することや温度・湿度の管理といった品質管理に関することは、課題となっています。今後、そのような課題を解決できるような手立てを考えていく必要があります。

・通信環境などによって利用できない場合がある

オンライン服薬指導は、スマートフォンやタブレットなどの情報通信機器を使います。それぞれの通信環境や情報リテラシーによっては、そもそも使えないという点は大きなハードルです。高齢者は、そもそもスマートフォンなどを使い慣れていないので、操作方法に不安を覚える人も多いでしょう。

また、疾患によっては端末の操作や通話が難しいといったパターンも考えられます。家族がサポートできる環境なら可能かもしれませんが、頼る人がいない場合もあるので一概には言えません。

山間部や離島だと、そもそも通信インフラが整備されていないケースもあります。通信インフラが整備されていなければ、オンライン服薬指導以前の問題です。

・準備が必要

オンライン服薬指導をスタートするなら、調剤薬局側も準備をしなければいけません。電子カルテや薬歴システムなどと連携できるオンライン服薬指導システムなどを導入する必要があります。ゼロからのスタートだと負担が大きくなってしまうでしょう。

オンライン服薬指導には、このようなメリットとデメリットがあります。それぞれを把握しておくと、導入時に困惑せずに済むでしょう。デメリットもまだまだ大きいので、どのように対策するのかという点も重要になると考察できます。

■効率的な導入のためにM&Aをするならアテックへ!

オンライン服薬指導をゼロベースからスタートするとなった場合、薬剤師の負担が大きくなってしまいます。また、利用してくれる人の混乱を招くことにもなりかねません。そうなることを回避するには、実績がある調剤薬局などとM&Aをするのがおすすめです。

調剤薬局のM&Aは、後継者候補不足によって活発化しています。しかしそれだけではなく、時代のニーズに合うサービスを提供するためにM&Aを行うといったケースもあります。既にオンライン服薬指導のノウハウを持つ調剤薬局とM&Aを行えば、効率的に導入可能となるのです。

効率的な導入のためにM&Aを考えているなら、1991年に創業してから調剤薬局のM&Aをサポートし続けているアテックへの相談がおすすめです。もし少しでもM&Aに興味があるなら、お気軽にご相談ください。
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