対面せずとも診療が行えるオンライン診療は、近年多くの方に注目されるようになりました。処方箋や服薬指導に関する法改正も行われるようになっており、今後の対応に不安を抱えている調剤薬局オーナーもいるかもしれません。

そこで今回は、オンライン診療の処方箋の受け取り方や、オンライン診療から薬の処方までの流れ、薬の処方に関する注意点などをご紹介します。オンライン診療の増加における調剤薬局市場の影響や対策などについても解説しているので、ぜひ最後まで目を通してみてください。

■オンライン診療での処方箋の受け取り方とは

まずは、オンライン診療での処方箋の受け取り方をご紹介します。受け取り方は、基本的に院外処方のみとなります。

・院外処方



患者さんがオンライン診療で処方箋を受け取った場合、院外処方という形で薬を受け取る必要があります。院外処方とは、診療を受けた病院やクリニックから発行された処方箋を患者さんが調剤薬局へ持って行き、薬剤師が薬を処方する方法です。

病院やクリニックの近隣には調剤薬局があることが一般的ですが、最寄りの調剤薬局だけでなく、ドラッグストアやスーパーに併設された薬局を選択される場合もあります。患者さんにとって、薬剤師から直接服薬指導を受けられるというのは院外処方ならではのメリットです。このほか、患者さんが自宅での受け取りを希望する場合は、医師が調剤薬局へ処方箋を持参するかFAXで送るなどして、薬を郵送することになります。

・院内処方の場合は調剤薬局まで足を運ばない



院内処方は、病院やクリニックでの診療後に処方する方法です。診療を受けた医療機関で処方箋を出すのではなく、会計の際に薬の受け取りまでを完結できる方法です。中には、自宅まで薬を郵送するケースもあります。

院内処方の場合病院やクリニックは処方箋を出さないため、患者さんは調剤薬局まで足を運ばずに帰宅してしまいます。しかし、診療を受けた医療機関で扱っている薬剤しか処方してもらえないため、処方薬が多い場合は院外処方となる場合もあるでしょう。

■オンライン診療から薬剤処方までの流れ

患者さんがオンライン診療から薬の処方までの流れとしては、以下のようになっています。

・オンライン診療の予約を取る ・診察 ・会計 ・薬剤の受け取り

医療機関の受診後に薬剤を受け取るというのは、通常の流れと同じです。しかし、直接医療機関に診察券を持って行き、順番待ちとして診察というわけではなく、受診には事前予約が必要です。

予約は、独自のサービスやWeb・アプリ・電話などから行えます。診察は画面越しで行いますが、対面での診察と同じように自覚症状や症状が発現した期間などを伝え、必要な薬を処方してもらいます。オンライン診療で指定された支払い方法での会計を終えると、院内処方または院外処方での薬の受け取りという流れです。

患者さんにとっては、体調の悪い時に外出することなく診療を終え、薬を受け取れるオンライン診療は大きなメリットとなっています。症状のある人が外出を控えることで、感染症リスクも軽減できます。

■薬の処方に関するルール及び注意点

オンライン診療での処方箋を受け取った場合は、薬剤の処方に関するルールに則って対応しなければなりません。ここでは、オンライン診療における処方箋の取り扱いについてご紹介します。

・診療ガイドラインに沿った処方を行う



調剤薬局がオンライン診療での医薬品の処方を行う場合、診療ガイドラインを参考に対応しなければならないという取り決めがされています。具体的には、一般社団法人日本医学連合が「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」を作成しており、このような関係学会が定めた診療ガイドラインを参考にする必要があるとされています。

初診の場合、呼吸器系・循環器系・消化器系・腎尿路系などの症状がある場合は、オンライン診療ではなく医療機関を直接受診し、対面での診療が必要です。処方箋を受け取った際には、特に感冒症状でも重症化しやすいと言われている心疾患や糖尿病などの既往歴についても、慎重に確認しなければなりません。

・処方できない薬剤がある



オンライン診療では、麻薬や向精神役など、十分な安全管理を要する医薬品に関しては処方しないよう取り決めされています。厚生労働省でも、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を提示しており、麻薬や向精神役といった薬剤の処方は行わないよう記載されています。例えば、抗うつ薬や睡眠薬・抗認知症薬・精神安定剤などです。

また、日本医学会連合が提示している「オンライン診療の初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」においても、抗悪性腫瘍剤や免疫抑制剤といったハイリスク剤と呼ばれる医薬品は原則処方を控えるべきと記載されているのです。このほか、オンライン診療における医薬品処方に関しては、慎重に投与すべき医薬品も記載されています。オンライン診療での処方箋を受け取った場合には、処方する医薬品についてしっかり確認し、処方が難しい場合には診療した医療機関への問い合わせ等、必要な対応を図る必要があります。

・8日以上の処方ができない



オンライン診療で発行された処方箋は、基礎疾患や正確な情報が把握しにくい患者さんに関しては、8日以上の薬の処方ができません。厚生労働省では、「オンライン診療の適切な実施に関する指針」において8日以上の薬の処方を禁止する規定を記載しています。

オンライン診療は、必ずしもかかりつけ病院やクリニックでの診察とは限らないため、基礎疾患の情報が把握し切れないことも多いです。中には、多受診での重複処方をしている患者さんや、医薬品の転売・意図的な重複処方などの犯罪行為を行うケースもあります。

このような事態を防ぐためにも、オンライン診療で発行された処方箋に関しては、患者さんの状態を十分に把握できないと判断された場合は8日以上の処方をしないよう徹底しなければなりません。また、処方後に関しても、しっかりと服薬状況を把握しておかなければなりません。

■調剤薬局市場が厳しい状況になる可能性も

国内では、2018年3月に厚生労働省はオンライン診療に関する指針を策定し、同年度の診療報酬からオンライン診療料やオンライン医学管理料といったものが新設されています。最近では多くの病院やクリニックで導入しており、決して珍しいものではなくなっています。

しかし、オンライン診療の影響を受けているのが調剤薬局市場です。院内処方や薬の郵送などで完結するケースも多く、患者さんが調剤薬局へ足を運ばないケースも増えています。ここでは、調剤薬局経営が厳しい状況になる理由をご紹介します。

・受診控えの深刻化



先にも述べたように、オンライン診療が浸透したことによって、患者さんは直接足を運んで受診するのを控えるケースが多くなっています。これは、院内感染防止や非接触診療・服薬指導の実施が国から求められたことがきっかけです。しかし、調剤薬局は患者さんから処方箋を受け取らなければ経営が成り立ちません。

コロナウイルスやインフルエンザなど、感染症が拡大すると受診控えする患者さんが増え、調剤薬局の待合室も閑散とする光景を目にすることができます。受診控えが深刻化すると、患者数が格段に減り、処方箋枚数も同様に減ってしまいます。

調剤薬局では、処方箋の枚数と処方箋の単価によって売り上げが左右されるため、処方箋枚数が減少すればするほど売り上げも落ち込み、経営難に陥る可能性が高くなるのです。実際にオンライン診療がスタートしてからというもの、業績が悪化した調剤薬局や、倒産を余儀なくされた調剤薬局も増えています。

・後継者・薬剤師不足



オンライン診療が浸透する以前から、調剤薬局業界では人手不足が叫ばれてきました。薬剤師を目指す人材の不足はもちろん、少子高齢化に伴う後継者不足も要因のひとつです。新型コロナウイルスが全国的に広がりを見せた頃には、感染症リスク拡大を防ぐために出勤できずにいた薬剤師も少なくありませんでした。

一方、経営難に苦しむ調剤薬局では、新たな薬剤師を雇うだけの余裕がないケースも少なくありません。深刻化する人手不足でも、それ相応の対処ができなければ、経営を続けるのが難しくなってしまいます。

特に、都心部よりも人口が少ない地方では、薬剤師や後継者不足が深刻化しています。早急に手を打たなければ、調剤薬局業界は競争がより激しくなる可能性が高いでしょう。

・大手調剤薬局やドラッグストア・スーパー併設調剤薬局の増加



大手調剤薬局業界では、最新鋭のシステムの導入や24時間対応型のスマホアプリでの予約対応など、便利に利用できる仕組みを整えている所が多いです。また最近では、街のドラッグストアやスーパーに調剤薬局が併設されている店舗も増えてきました。処方箋を受け付けてくれるだけでなく、日々の買い物ついでに寄ることのできる利便性の高さから、店舗数は年々増え続けています。

一方で、こうした大手調剤薬局やドラッグストア・スーパーに併設された調剤薬局に患者さんが流れてしまうために、中小規模の調剤薬局では売り上げが落ち込み、経営状況が厳しくなっている所も多いです。薬剤師を目指す若者も、より条件の良い大手調剤薬局を志望するケースが多く、悪循環となっているのです。

■調剤薬局が生き残るための方法とは

厳しい状況が続く中、調剤薬局が生き残るためにはどのようなことができるのでしょうか。最後に、調剤薬局が生き残るためにできる対策をご紹介します。

・オンライン服薬指導の導入



まずは、オンライン服薬指導の導入です。オンライン服薬指導は、その名の通り非対面で服薬指導を行うことです。感染リスク軽減のため、また利便性のために導入する調剤薬局もたくさんあります。

オンライン服薬指導は、パソコンやスマホの画面上で服薬指導を行えるほか、処方した医薬品を郵送することも可能です。かかりつけ薬局として処方箋を持って来ていた患者さんも、これまで通り利用できるので、調剤薬局の待合室の混雑緩和にもつながります。オンライン診療と併用して利用してもらえれば、医療機関での診察と同時に服薬指導や薬の受け取りまでオンラインで完結できるため、非常に便利です。

・24時間対応可能な予約システム導入



調剤薬局の待合室は、感染症の流行時期になると非常に混雑する傾向があります。中には、慢性疾患等の受診で、感染リスクを避けたい人も多いです。そんな人に向けて、24時間対応可能な予約システムを導入するというのも方法のひとつです。

これは、発行された処方箋の写真を撮影し、専用のアプリやWebサイトを通じて薬の処方を希望する調剤薬局に送り、調剤時間の予約ができるシステムとなっています。予約システムを導入すると、患者さんは服薬指導のタイミングができる頃合いで足を運ぶことができるため、滞在時間を最小限にできるのです。

・M&A



最近では、薬剤師の確保や後継者問題などを抱えている調剤薬局は非常に多いです。オンライン服薬指導や予約システム導入以前に、経営自体が立ち行かなくなることを危惧しているなら、調剤薬局のM&Aを検討してみましょう。

M&Aは、薬剤師を目指す若者や事業を拡大したい大手調剤薬局などに事業承継することで、調剤薬局を存続させられる方法です。経営状況を好転させられる可能性が高いだけでなく、所属している薬剤師の雇用継続につながるため注目されています。厳しい状況を乗り越え、より良い調剤薬局経営を行っていくためには、M&Aも選択肢のひとつです。

■調剤薬局の事業承継を検討している方はアテックへご相談を

オンライン診療は、非接触での診察が行えるため、感染リスクの軽減や体調の悪い患者さんの負担軽減につながるとして注目されています。しかし、院内処方での薬の受け取りの場合、調剤薬局の処方箋枚数が減り、経営状況が落ち込んでしまう可能性もあります。

大手調剤薬局やドラッグストアやスーパー併設型の調剤薬局が多く参入してきていることも相まって、厳しい状況に立たされる中小規模の調剤薬局も多いでしょう。アテックでは、そんな中小規模の調剤薬局のM&Aサービスを行っています。創業当初より調剤薬局のM&Aに特化してきたからこそ、豊富な実績とノウハウを駆使して、最適な提案を行っています。

また、アテックはM&Aでの理想の相手を見つけることのできるマッチングサービスとして、「ファーママーケット」というサイト運営も行っています。より良い経営を進めていきたい、M&Aで今後の調剤薬局としてのあり方を見つめ直したいという方は、ぜひお問い合わせください。
メールマガジンの登録