調剤薬局業界では、診療報酬改定による影響が大きく、新たに導入されるものに対しても迅速に仕組みやルールを理解する必要があります。患者様一人ひとりに適切な対応をしていくためには、柔軟な姿勢と取り組みが重要と言えるでしょう。

リフィル処方箋は、慎重報酬改定により導入された新たな処方箋です。リフィル処方箋が導入されたことで、医師の業務負担や患者様の通院費・医療費といった負担軽減が期待されています。

今回は、そんなリフィル処方箋がどのようなものなのか、リフィル処方箋の仕組みやメリットなどをご紹介していきます。リフィル処方箋を導入することによる調剤薬局経営への影響や、今後調剤薬局で求められることについても触れていくので、ぜひ最後まで目を通してみてください。

■リフィル処方箋とは

リフィル処方箋は、2022年4月より導入された処方箋です。まずは、リフィル処方箋とはどのようなものなのか、仕組みについてもご紹介します。

・リフィル処方箋とは



リフィル処方箋とは、条件を満たせば繰り返し使用することができる処方箋を言います。2022年度の診療報酬改定で新たに導入されました。条件とは、症状が安定している患者様に使用・医師が使用を許可した場合などです。

急性疾患ではなく、主に症状が安定している慢性疾患で医療機関にかかっている患者様が対象となります。リフィル処方箋は最大3回まで繰り返し使用でき、医療機関を受診することなく、常用の薬を処方してもらえるという特徴があります。

現在、40歳以上の方で医療機関を受診し、処方してもらっている薬として多いのは血圧降下剤や高脂血症用剤、糖尿病用剤など、生活習慣病に関わるものが大半です。長期にわたり通院を続けている方は、65歳以上が全体の49%、次いで40代~64歳が全体の44.6%と半数以上を占めています。これに該当していて症状が安定している方なら、リフィル処方箋を活用することでその分医療機関への受診回数が減少し、医師と患者様双方の負担が軽減されるのです。

・仕組み



従来であれば、処方箋をもらうには医師の診察が必要でした。しかし、初回の診察でリフィル処方箋を出してもらえば、2回目以降は診察不要となります。

仮に4月1日に初回の診察・調剤が行われたとしましょう。この時、慢性疾患の症状が安定していて、医師が許可すれば、処方箋下部にある「リフィル処方箋可」の箇所にチェックが入ります。

4月1日に1回目を受診し、30日分の薬をリフィル処方箋で処方してもらったと仮定すると、2回目の調剤予定日は30日後の5月2日です。リフィル処方箋の調剤可能期間は、調剤予定日を含まずに前後7日間とされているので、5月2日の7日前となる4月25日~5月9日となるわけです。

2回目の調剤が4月25日に行われた場合、7日分の薬が余る計算になります。しかし、服薬状況を確認後問題がないと判断されれば、ここでは30日分調剤されます。3回目の調剤予定日は5月25日、調剤可能期間は5月18日~6月1日です。

3回目まで調剤されると、リフィル処方箋は患者様に返却され、本人に管理してもらう形となっています。調剤薬局では、服薬に係るフォローや調剤予定日の通知、調剤可能期限の管理が必要です。

服薬指導の際、薬剤師は服薬状況の確認に加え、患者様の状態を見てリフィル処方箋での調剤に問題がないか確認しなければなりません。問題があると判断した場合には、調剤をせず医療機関への受診を勧める必要があります。

■調剤薬局で導入するメリット

調剤薬局でリフィル処方箋を導入することには、様々なメリットがあります。ここでは、調剤薬局で導入するメリットをご紹介します。

・患者様の負担軽減



まずは、患者様の通院負担が軽減されることです。慢性疾患の場合、自覚症状がないことも少なくありません。中には独断で治療をやめてしまう場合もあります。

また、年齢を重ねるにつれ、通院による身体的負担も大きくなります。事前に受診予約をしていても、通院される方が多く、呼ばれるまでに時間がかかるといったことも多いです。そんな時、リフィル処方箋を活用すれば医師の診察を受ける必要がなくなるため、通院回数が減り、患者様の負担が軽減されるのです。

・医師の負担軽減



慢性疾患で受診する方が多くなればなるほど、医師の業務負担は増える一方になってしまいます。リフィル処方箋を導入することで、処方薬をもらうためだけに受診していた方の受診回数を減らせるため、医師にとっても業務負担軽減につながります。患者様の数が減れば、一人ひとりにかけられる時間が増えますし、急性疾患の方への迅速な対応や高度な医療・治療時間確保も可能です。

・医療費削減



深刻な高齢化の影響で、近年は医療費の増大が問題になっています。リフィル処方箋を導入すれば、患者様が医療機関を受診する回数が減るため、窓口で支払う医療費が削減できます。医師も薬を処方する回数が減るため、薬を調剤する回数も減り、調剤薬局の薬剤師が薬の管理がしやすくなるといったメリットもあります。

■リフィル処方箋を導入することによる調剤薬局への影響

アメリカやフランス、オーストラリアなど諸外国では、既にリフィル処方箋が積極的に運用されています。一方、2022年に導入されたばかりということもあり、日本ではまだ浸透しておらず、普及しているとは言い難い状態です。

海外と日本とのこの差は、リフィル処方箋にはまだまだ課題・改善点が多いと考えられているからです。では、実際にリフィル処方箋を導入することで、調剤薬局はどのような影響を受けてしまうのでしょうか?

・医療事故や健康被害の恐れがある



これまで薬は医師が処方し、薬剤師が調剤してから渡すことで、医師と薬剤師のダブルチェックにより患者様の状態を確認していました。しかし、リフィル処方箋を導入すれば、その期間は薬剤師のみが服薬状況や体の状態を把握していかなければなりません。

薬剤師では患者様の病状や健康把握が難しい部分もあるため、医師の診察回数が少なくなると、医療事故や健康被害が発生する恐れがあります。病状が悪化しているにも関わらず、薬剤師がそのことに気が付けなければ発見が遅れ、思わぬ事故や健康被害が発生するかもしれません。

また、患者様がリフィル処方箋に慣れてしまい、必要な診察の際にも受診を控える可能性もあります。長期間診察を受けないという状態が続けば、病状が悪化したり健康被害が出たりするリスクも高まってしまいます。

・医薬品が転売される可能性がある



リフィル処方箋を導入すると、調剤予定日と調剤可能期間が設けられます。患者様は、自身の都合に合わせて足を運ぶことになるため、必ずしも調剤予定日に訪れるとは限りません。中には、まだ薬が残っていても調剤可能期間になってすぐに薬を調剤してもらうという方もいるでしょう。

同じ薬を繰り返し処方してもらうことで、患者様にとっての医薬品交付までのハードルが低くなり、転売される可能性があります。毎回医師の診察があるわけではないため、患者様は自分にとってどれほど重要な薬なのか十分に把握できず、自己判断で使用する可能性があるのです。医薬品を転売していても、気付くのが遅くなれば健康被害や病状悪化につながってしまいます。

・経営困難になる可能性がある



リフィル処方箋を導入すると、慢性疾患を抱える患者様の受診回数が減少します。受診回数が減ることは、患者様にとっても医師のとっても負担軽減につながるというメリットがあります。しかし、1日の患者数が減るということは、その分医療機関の収入が低下する可能性があるということでもあるのです。

慢性疾患で通院している方が大半を占める医療機関や、高齢者の患者様が中心の医療機関は、リフィル処方箋を導入することで経営が困難になる可能性があります。また、仮に医療機関において経営困難となれば、その周辺にある調剤薬局へも影響が及んでしまいます。リフィル処方箋を導入する場合には、医療機関への影響、患者様への影響、そして調剤薬局側の影響についてもしっかり理解しておかなければなりません。

■今後の調剤薬局経営で求められること

リフィル処方箋は、調剤薬局経営にも様々な影響をもたらすことがわかりました。続いては、導入する場合に調剤薬局経営ではどのようなことが求められるのか解説していきましょう。

リフィル処方箋の導入体制は必要



リフィル処方箋は、長年に渡って議論されてきたもので、2022年4月になりようやく日本でも導入されたという経緯があります。残薬問題や・重複投与・多剤併用など、医療業界では多くの問題を抱えています。リフィル処方箋は、国の期待が込められた重要な改定内容なのです。

そんな中、一般社団法人・日本保険薬局協会のリフィル処方箋応需の実態調査報告書(2022年12月)では、2022年11月2日~11月24日までに回答のあった4,352件の調剤薬局のアンケートを元に、リフィル処方箋の応需実績や薬局での対応実態が明らかになりました。これによれば、全体の92.4%の調剤薬局においてリフィル処方箋導入体制が整っていることがわかっています。一方で、医療機関では、患者の希望があればリフィル処方箋の導入を検討するという回答が全体の5割を超え、活用そのものに否定的な見解を示す回答も32.2%となっています。

また、調剤薬局でのリフィル処方箋受付件数で見ると、2022年10月単月の場合、全体の26%という応需実績がありました。リフィル処方箋応需実績がある調剤薬局では、日常的に処方箋を受け付けている医療機関からの応需が6割となっています。つまり、医療機関ではリフィル処方箋に積極的は意見が少ないものの、患者様からの要望で導入したというケースが多くなっているのです。

リフィル処方箋の応需実績は調剤薬局の形態や立地によって異なり、ドラッグストア併設型の調剤薬局で特に多く、医療ビル含むモール型の立地に集中していることがわかっています。病院や診療所前にある調剤薬局では普及率がまだまだ低い反面、患者様からのニーズは高いです。そう考えると、いつでもリフィル処方箋が導入できる体制構築が急務であることがわかります。

他調剤薬局との差別化が必要



現状では、リフィル処方箋はまだ普及率が低い状態ですが、リフィル処方箋の発行理由は患者様からの要望が大半です。患者様にとっては、通院に伴う負担や医療費負担軽減というメリットが大きく、症状が安定しているからと主治医に相談するケースが多いのです。

調剤薬局では、これまで医療機関に通う患者様を門前で待ち、迎えるという経営スタイルが主流でした。しかし、リフィル処方箋が普及していくことで、患者様はわざわざ医療機関の近くまで足を運ばす、自宅近くの調剤薬局で済ませるといった可能性が高くなります。

調剤薬局は、今後かかりつけ薬局として通ってもらえるような経営スタイルを確立していく必要があります。立地や患者様へのフォローアップはもちろん、選ばれ続ける努力をして、他薬局との差別化を図ることが求められるのです。

■薬局M&Aを検討しているならアテックまで

2022年4月にリフィル処方箋が導入されたことで、調剤薬局は病院や診療所などの門前で待ち構えるという従来どおりの経営スタイルのままでは経営に支障が出る可能性があります。しかし、リフィル処方箋への体制構築に関わる対応や薬剤師不足など、様々な事情によって、新たな経営戦略を計画したくても、現実的には困難なところがあるのも事実です。

そんな方は、薬局M&Aを検討してみてはいかがでしょうか?M&Aを行うことで経営に関わる様々な問題点をクリアし、新たな経営戦略も立てやすくなります。

アテックは、1991年に創業してからこれまで、調剤薬局M&Aに特化したサポートを続けてきた豊富な実績を持つ会社です。30年以上調剤薬局に携わっており、経験豊富なスタッフが適切なサポートを提供します。

経営が思うようにいかない、リフィル処方箋の導入に対応していく自信がない、他薬局との差別化を図る戦略が少ないなどの理由から、薬局M&Aを検討しているオーナーも少なくありません。薬局M&Aに興味がある方は、ぜひアテックまでご相談ください。
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