医薬分業は1974年からスタートし、約50年が経過しています。医薬分業は浸透していますが、この体制が必ずしも患者さんのベネフィットになっているとは限らないのではないかという声も聞かれています。調剤薬局や薬剤師を取り巻く環境は厳しいものになりつつあると言えるでしょう。

時代の変化と共に調剤薬局業界を巡る環境も大きく変化しているため、対応していかなければいけません。そこで今回は、調剤薬局を取り巻く環境の変遷や今後調剤薬局が目指すべき姿、地域連携薬局と専門医療機関連携薬局の重要性、環境の変化に対応するためのM&Aについて解説していきます。

■調剤薬局を取り巻く環境の変遷

まずは、調剤薬局を取り巻く環境の変遷からみていきましょう。

・調剤薬局業界の大まかな動き



医薬分業の進展などが要因となり、調剤薬局や薬剤師を取り巻く環境は大きな変化を遂げています。しかし門前薬局が医療機関の周辺に乱立しているため、患者さんの服薬情報などの一元管理や把握が難しくなっているといった現状も理解しておかなければいけません。さらに患者さんの視点から見ると、医薬分業による金銭負担が大きくなっているのに、それに見合ったサービスの質の向上などは実感できていないケースは多いです。

このような状況を鑑み、2015年に厚生労働省は「患者のための薬局ビジョン」を策定しました。これは、患者さんに焦点を当てた医薬分業を実現するためのものです。立地依存から抜け出して機能を発揮すること、対物中心から対人中心のサービスへシフトすること、連携することの3つが主要なビジョンとなっています。

2023年にはより利便性を向上するために、電子処方箋の導入もスタートしています。電子処方箋を取り入れることによって、調剤・服薬指導・フォローアップをより効率的に行えるようになる、重複投薬や併用禁忌の自動チェックができる、データを入力する負担を軽減できる、調剤済みの処方箋の管理がしやすくなる、といったメリットが生まれるのです。安全性の向上にもつながるため、患者さんにとってもメリットが大きい仕組みだと言えるでしょう。

・IT企業の参入でさらなる変化が予想される



調剤薬局業界に別業界から参入するケースは珍しくありません。近年最も注目されているのは、IT企業の参入です。なぜIT企業の参入が注目されているのかというと、電子処方箋の運用がスタートすることで、どこにいても処方箋の受け取りや服薬情報の閲覧ができるようになるためです。

現状だと電子処方箋はそこまで広まっていませんが、今後メインとなる可能性は大いにあります。そのような時にIT企業のこれまで培ってきたスキルなどが役立つと考えられます。発展途上のシステムがあるからこそ、IT企業にとって旨味のある業界だと言えるのです。

時代の流れに合わせた変化に乗り遅れないようにすれば、調剤薬局業界で生き残れる可能性も高まります。そのためには、これまでの動きや今後の予測を把握し、どうすべきなのかしっかり考える必要があります。

■今後調剤薬局はどのような姿を目指すべきなのか?

調剤薬局業界を巡る環境が変化している中で、どのような姿を求めていくべきなのでしょうか?続いては、今後調剤薬局が目指すべき姿についてご紹介します。

・調剤薬局同士の連携を強化する



調剤薬局同士の連携を強化することで、生産性を改善する効果が期待できます。店舗数が多く、調剤薬局市場は低寡占状態となっています。そのような状況下で卸への購買力を高めたり、薬剤師を確保したりするためには、同一エリア内にある中小規模の調剤薬局同士の連携が重要なポイントになるのです。

具体的には、医薬品の購入を取りまとめる、調剤薬局同士で在庫売買仲介サービスを利用する、同じEHRシステムを利用して患者さんの情報を共有するなどが挙げられます。このような連携をすると、在庫の再分配や薬剤師が協力する体制を整えやすくなります。生産性の高い調剤薬局経営にもつながるため、連携の強化は重要な要素だと言えるでしょう。

・業務内容を拡大する



これまでは医師から出された処方箋に従って薬を提供するだけでも問題ありませんでした。しかし今後は、薬剤師が医療領域の役割分担を適正化するために業務内容を拡大することが求められています。しかし活動のハードルが高いので、薬剤師会が中心となって薬剤師同士が連携できるような体制を整えたり、各種メディアを活用して外部へ発信したりする必要があります。

調剤薬局の売上を向上させる方法の1つとして注目されているのが、物販です。販売するものは一般用医薬品や健康食品、雑貨など多岐にわたります。セルフメディケーションのサポートにもなるため、物販をスタートする調剤薬局は増えています。

売上を効率的に高めていくためには、患者さんのニーズを把握したり、専売品を置いたりするといった工夫が必要です。ニーズに合う商品を仕入れられれば、他の調剤薬局との差別化にもつながります。

・地域住民の健康に貢献する



厚生労働省が打ち出している「患者のための薬局ビジョン」を実現するためには、退院した患者のフォローアップや在宅医療への移行に向けたサポートも重要です。さらに、異業種を巻き込みながら患者さんの利便性を向上させたり、セルフケアの推進を行ったりすることも求められています。従来の役割を超えたかかりつけ薬局やかかりつけ薬剤師として、地域密着した健康促進活動も積極的に行わなければいけないでしょう。

調剤薬局業界に限ったことではありませんが、これまでどおりのやり方では廃れてしまう可能性が高いです。そうならないためには、自分たちの業界がどのような姿を目指すべきなのか理解し、それに向けた変化を起こさなければいけません。

■地域連携薬局と専門医療機関連携薬局がキーワード

今後の調剤薬局業界におけるキーワードは、地域連携薬局と専門医療機関連携薬局です。これらは2019年11月の医薬品医療機器等法(通称:薬機法)の改正によって、2021年8月からスタートしました。続いては、それぞれがどのような役割を担っているのか解説していきます。

・地域連携薬局



地域連携薬局は、入院や退院、在宅医療などの対応を地域の医療施設と提携しながらできる薬局を指します。地域の患者さんが安心して薬を使った治療を受けられるようにサポートする役割を担うのです。

・専門医療機関連携薬局



専門医療機関連携薬局は、専門的に薬を管理しなければいけない患者さんに対するサポートを医療機関と連携しながら行います。高度な薬剤管理や調剤に対応できることが強みです。現在専門医療機関連携薬局で対応できる疾患はがんのみですが、今後はさらに追加される予定となっています。

コンビニよりも多くなってしまった調剤薬局は、今後淘汰される可能性が高いです。その際、地域連携薬局もしくは専門医療機関連携薬局に該当しない調剤薬局から淘汰されると考えられます。調剤薬局業界で生き残るには少しでも早く要件を満たし、地域連携薬局もしくは専門医療機関連携薬局の機能を持つ必要があります。

■環境の変化に対応するためにはM&Aも視野に入れよう

調剤薬局オーナーの中には、環境の変化に対応するために奔走している方もいるでしょう。しかしその変化は非常に大きいため、個人だけで対応することは難しいです。そこで視野に入ってくるのがM&Aです。

調剤薬局業界においてもM&Aは積極的に行われています。調剤薬局業界で積極的にM&Aが行われている理由はいくつか考えられます。ここでは、3つの理由をピックアップしてご紹介しましょう。

・かかりつけ薬局へ移行しやすくなる



厚生労働省の「患者のための薬局ビジョン」には、かかりつけ薬局へ移行するという方針も盛り込まれています。それに伴い、かかりつけ薬剤師が一定の要件を満たした上で行った業務には“かかりつけ薬剤師指導料”と呼ばれる薬学管理料が加算されるのです。これは、調剤薬局の売上向上に大きく貢献します。

しかし、かかりつけ薬局になるためには、在宅患者に対応できる体制を整える、24時間対応ができるようにするなどの条件があります。条件をクリアできるだけの薬剤師の確保や人件費・設備費の投資は必要不可欠です。単独で条件クリアが難しいケースも多いことから、人材の確保や経営資源の集約化が目的のM&Aはさらに増えていくと予想できます。

・薬価や調剤報酬の改定に対応しやすくなる



国は医療費を削減する方針を打ち出し、薬価や調剤報酬はマイナス改定されています。調剤報酬は、店舗数が多い大手の調剤チェーンや病院に隣接されている門前薬局において低い数値が適用されます。その結果、収益の減少が予想されるのです。

そこで大手の調剤チェーンは、M&Aで事業拡大することでスケールメリットの確保を狙うケースが増えてきました。そうすることにより、収益性の向上を狙えるためです。経営資源が潤沢ではない小規模な調剤薬局の場合は、大手調剤チェーンに吸収されることによって事業の存続を狙っています。

・後継者問題を解決できる



調剤薬局に限った話ではありませんが、多くの中小企業は後継者問題に悩まされています。経営者の高齢化が進んでいるにもかかわらず、後継者が不在となっているケースは珍しくありません。高齢になった調剤薬局オーナーが事業承継をどうするか悩んでしまうことは大きな問題です。

事業承継には、親族内承継・親族外承継・第三者承継の3パターンがあります。従来だと経営者の子どもをはじめとした親族が承継するケースや役員をはじめとした従業員が承継するケースが多く見られました。しかし近年は、親族にも従業員にも後継者候補となる人材がおらず、M&Aで第三者承継を採用する調剤薬局が増えています。

調剤薬局M&Aを行う理由には、このような点が挙げられます。いずれも調剤薬局業界が抱える課題を何とかしなければいけないという思いが込められているようです。生き残るためには、M&Aも前向きに検討する必要があると言えるでしょう。

■調剤薬局M&Aのメリット・デメリット

調剤薬局M&Aを行うのであれば、メリットやデメリットも把握しておく必要があります。具体的にどのようなメリットとデメリットがあるのか、いくつかピックアップしてご紹介します。

・メリット



譲渡側のメリットには、事業を継続できる、創業者利益を獲得できる、後継者問題の解決ができる、事業拡大の機会を獲得できる、といった点が挙げられます。調剤薬局が抱える課題を解決するためにM&Aを行うケースが多いと前述しましたが、まさにそれがメリットにつながっています。

譲受側のメリットには、スケールメリットを享受できる、薬剤師や調剤事務などの人材を確保できる、開業までのスパンが短くなる、顧客を引き継ぎできる、株式譲受の場合だと許認可の手続きを省略できる、といった点が挙げられます。

・デメリット



譲渡側のデメリットには、従業員の待遇が悪化する可能性がある、人員を整理しなければいけない場合がある、経営における裁量権が制限されてしまう、医療機関との関係が悪化してしまう、などが挙げられます。

譲受側のデメリットは、経営者が変わることで譲渡先の従業員が反発する、離職する従業員が出てしまう、経営統合で失敗するリスクがある、などです。

調剤薬局M&Aを考えているのであれば、譲渡側と譲受側にこのようなメリット・デメリットがあることも理解しておきましょう。

■調剤薬局のM&Aに関する相談はアテックへ

調剤薬局業界を巡る環境は、法改正などをきっかけに目まぐるしく変化しています。その変化に対応するためにM&Aを考えているオーナーもいるでしょう。

しかしM&Aには専門的な知識も必要になるので、プロに相談しないと思ったような結果を得られない可能性があります。アテックは調剤薬局M&Aの相談先としておすすめです。最後に、アテックとファーママーケットについてご紹介します。

・アテックについて



アテックは、1991年に創業した調剤薬局業界M&Aを専門的にサポートしている会社です。中立かつ公正な立場で、多くのサポートを行ってきたという実績を有しています。問題をスピーディーに解決するノウハウも持ち合わせているため、環境の変化に対応できるM&Aの実現も可能となります。

・ファーママーケットについて



ファーママーケットは、アテックが運営する調剤薬局オーナーと独立を考えている薬剤師をつなぐマッチングサービスです。既存の調剤薬局を引き継ぐことで、双方にとって大きなメリットが生まれます。デメリットになるリスクがある部分に関しても、不安を解消できるようにサポートしています。

アテックはこれまでに多くの実績を積み重ねてきました。幅広いニーズに応えられるようなサポート体制も整っています。目まぐるしい変化に対応するべくM&Aを考えている調剤薬局のオーナーは、ぜひアテックまでご相談ください。
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